“資産寿命を延ばす”ために必要な引き出し方とは?

50代からの投資はまだ間に合うのか?(続編)
前回は、投資をはじめようと考えている人はタイミングや商品選択に時間を使うよりも、まずは国内外の株式と債券のインデックスに分散して少しでも早く一定額を投資するほうが結果的に健全な生活を送ることができるのではとお伝えいたしました。
目次
1.定額の引き出しの効果は?
2.定率の引き出しの効果は?
3.<結論>資産寿命をのばすには
今回は資産寿命を延ばすために必要な引き出し方について。
節約や時間を掛けて増やした資産を、将来お金が必要になったときに、多くの人は一定の金額を引き出しているのが普通だと思います。
本当にこの引き出し方法を続けていていいのでしょうか?
定額の引き出しの効果は?
例えば、下図のように1000万円の資金を運用しながら毎年一定額で引き出すとしましょう。
<ケース1> 毎年一定額で引き出す
1年目は景気が良く運用成績がよかったが、2年目以降悪くなった
1年目 | 2年目 | 3年目 | |
期待できる収益率 | 30% | 15% | −30% |
引き出し額 | 100万円 | 100万円 | 100万円 |
時価資産残高 | 1200万円 | 1280万円 | 796万円 |
<ケース2> 毎年一定額で引き出す
1年目は景気も悪く運用成績が悪かったが、2年目以降良くなった(ケース1の期待できる収益率を逆にした場合)
1年目 | 2年目 | 3年目 | |
期待できる収益率 | −30% | 15% | 30% |
引き出し額 | 100万円 | 100万円 | 100万円 |
時価資産残高 | 600万円 | 590万円 | 667万円 |
ケース1とケース2を比べると、3年間の期待できる収益率も引き出す金額も同じはずなのにどうして3年目の残高が違うのでしょうか?
1年目の時価資産残高が減少したために、そこから得られるはずのリターンが少なかった。
時価資産残高が減っているときに引き出す100万円の価値は100万円以上のお金を引き出しているという結果につながる訳です。
前編でも書きましたが、「増やすことだけを考えるのではなく、運用と引き出し方の両方を考えておかなければいけない」と言うことです。
50代から投資をはじめるうえで考えておきたい3つのことをもう一度思いだしてみてください。
・タイミングや商品選択に時間を使うよりも、少しでも早く一定額を投資する
・投資期間は75歳くらいまで続けられる計画を立てる
・お金を定額で引き出すよりも、時価残高の一定率で引き出す方が財産を守りやすい
実際に金融庁から「毎月分配型」は資産形成に向かないと指摘をうけ、投信各社も資産残高が減れば分配金を自動的に抑える「定率分配型」が増えていますが、高い運用コスト(信託報酬)にも注意が必要です。 (2020年2月2日(日)日経新聞朝刊 総合1面より)
定率の引き出しの効果は?
では、1000万円を一定率(年8%)で引き出した場合を見てみましょう。
<ケース3> 1000万円を一定率(年8%)で引き出す
1年目は景気が良く運用成績がよかったが、2年目以降悪くなった
1年目 | 2年目 | 3年目 | |
期待できる収益率 | 30% | 15% | −30% |
引き出し額 | 104万円 | 110万円 | 70万円 |
時価資産残高 | 1196万円 | 1265万円 | 815万円 |
(*1)
<ケース4> 1000万円を一定率(年8%)で引き出す
1年目は景気も悪く運用成績が悪かったが、2年目以降良くなった
1年目 | 2年目 | 3年目 | |
期待できる収益率 | −30% | 15% | 30% |
引き出し額 | 56万円 | 59万円 | 70万円 |
時価資産残高 | 644万円 | 681万円 | 815万円 |
(*1)万円未満は切り捨てて計算
3年間の期待できる収益率が同じ場合、一定比率で引き出すと、3年後の時価資産残高は同じ815万円です。
まとめ
米国でも運用を重視して資産を増やしながら、現金が欲しいニーズにも応える投信サービスはすでに10年以上前から普及しています。
時価資産残高に応じて定額引き出しをするのではなく、
一定比率で引き出したほうが資産の寿命を延ばすことができる。

ぜひ実践してもらいたいと思います。
執筆 ファイナンシャルプランナー:堀江
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